狼系王子とナイショの社内恋愛
「奥さんって……気が早いな」
「だってもうそうじゃないですかー。入籍はいつするんですか?」
「まぁ、もう結婚する事は決まっているんだし、焦らずいい日を探すつもりだよ。
来月には彼女の誕生日もあるから、その辺が有力候補だとは思ってる」
目の前の光景がぐにゃりと曲がった気がした。
立ちくらみとは違う眩暈みたいなものを感じて、倒れないように近くのデスクに片手をつく。
ドクドクドクドク、心臓が嫌なテンポでリズムを刻んで息が少し苦しくなった。
「いつからの付き合いなんですか?」
「半年くらい前からかな。
高校の同級生なんだけど、同窓会で再会してそれからだから」
「同窓会! えー、そんな事実際にあるんですね。ドラマの中だけかと思ってました。
いいなー」
次から次へと飛んでくる質問に答えているのは、確かに課長で。
人だかりの隙間からたまに見える課長の顔は、困惑しているようだったけれど照れ笑いを浮かべていた。
ああ、そうか。だから言えなかったんだ。別れの理由。
付き合ってる彼女が妊娠して結婚するから、私とはもう付き合えないって事だったのか……。
二年も付き合ってきたのに、この半年の間二股されてるなんて気づきもしなかった。