狼系王子とナイショの社内恋愛
霧がかかったように、課長の笑顔がぼんやりと霞んでいく。
ビルの中なのにおかしいな、蛍光灯の問題か?と思ってから、自分の涙のせいだと気づいた。
オフィス内で泣くとか、新入社員じゃないんだから。
でも、まだ目にたまっているだけで流れる前だからギリギリセーフだ。
誰かに指摘されてもあくびのせいだって笑えばいいし。
笑えばって……私、笑える?
とてもじゃないけど、今笑ってごまかすなんて事はできそうもなくて、そんな自分にまた涙が浮かぶ。
佐々山課長は……最低な男だ。
二股の末、違う女を選んで結婚するんだから。
そのために、私を平気で捨てたんだから。
そんな私のいる前で、笑いながら奥さんとの馴れ初めを話せるなんて、デリカシーのかけらもない最低な男だ。
そんな男のために傷つく必要なんてないし、泣くなんてもったいない。
堂々と言ってやればいいんだ。
おめでとうございますって……。
そう、笑ってやればいい。