狼系王子とナイショの社内恋愛
ふたりで過ごした二年間なんて、まるでなかったように。
それを悲しいと思う気持ちだって、いずれなくなる。
苦しくなった胸に大きく息を吸い込んで空気をためる。
まだ穴だらけの心。
そこら中で空気漏れを起こす胸にもう一度空気を入れてから、パソコンの画面と向き合った。
「高橋さん、今日も寄り道ですか」
会社を出て少し歩いたところにある漫画喫茶に入ろうとした時、そう声をかけられた。
さすがにここ連日ってなると、振り向かなくても誰だかは分かる。
だから、少しうんざりしながら振り返った。
「結城さんは今日も尾行ですか」
「たまたま通りかかったら、漫画喫茶に入ろうとする高橋さんを見つけただけです」
「そうですか。お疲れ様でした」