狼系王子とナイショの社内恋愛
「パソコン、私が使いますから。
それ以外だったらゲームでもDVDでも漫画でも好きにどうぞ」
そもそも、なんで漫画喫茶にカップルシートなんてあるんだろう。
静かにしなくちゃいけないのが原則なら、本来多人数シートなんて作るべきじゃないんじゃないの。
赤い革のソファを見ながらそんな文句を頭の中で呟く。
それからパソコンのキーボードの隣にカップを置いて、パソコンの前に座った。
ソファが沈むから、微妙にキーボードが打ちにくいけど、そこは仕方ない。
結城さんがこなければ、普通の個室で事務用の椅子に座って快適にパソコンが使えたハズなのに。
「高橋さん、一人暮らしですか?」
「……なんでですか?」
「いや、部屋に帰りたくない事情でもあるのかと思って。今日も寄り道だし」
「別に……。ただ、色々と思い出が詰まってるから一人でいるのがツラくなるってだけです。
フランクな恋愛しかした事ない結城さんには分からないでしょうけど」
「ああ、友達が言ってたから分かりますよ。
そいつ、同棲してた彼女が出て行った後、すぐ引っ越してました」