狼系王子とナイショの社内恋愛


イヤミのつもりで言ったのに、結城さんはまるで気にせずそう答えた。
そして、からかうように微笑んで「じゃあこれからは俺の部屋で時間つぶしますか?」と聞く。

「遠慮しておきます」
「そんな警戒しなくても何もしませんよ」
「女に不自由してない結城さんが言うならそうなんでしょうけど。
でも、そういう問題じゃないんです」
「他に問題がありますか?」
「優輝との恋を、他の人で誤魔化す様な事したくないんです。
ツラくても悲しくても」

もう終わってるのに?と眉間にシワを寄せて聞いた結城さんに、苦笑いを浮かべて頷いた。

「終わってても……。
今感じてる気持ちも、優輝との恋があったからだから」

結城さんはしばらく真顔のまま私を見て、それからそうですかと呆れたようにため息をつく。

「フリーズさせたら言ってください。俺ここでDVD見てるんで」
「さすがにネットするだけでフリーズはさせませんからご心配なく」

そう言った私に結城さんは微笑んで、テレビにつないだヘッドホンを耳にあてた。


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