狼系王子とナイショの社内恋愛
「気持ちを落ち着かせる音楽とか映像の事みたいですよ。
モーツァルトの曲に自然の音が入っているCDが人気らしいんですが、それに自然の映像をつけたモノが出たとかで勧められたんです。
今の高橋さんには丁度いいと思いますよ」
「でも、結城さんに調べさせといて私だけ……」
「実はそれ、営業先の社長に無理やり貸し付けられて困ってたんです。
次行った時感想を求められるだろうから仕方なく見てたんですけど、高橋さんが見て感想教えてもらえると俺としても助かるんですが」
そう笑う結城さんの言葉は、本心なのかそれとも優しさなのか。
少し考えながらも言わるままに、さっきまで結城さんが使っていたヘッドホンをつけてみると、緩やかなクラシックの曲に川のせせらぎがわずかに入り込んだ音が耳に静かに響いた。
流れている映像は、緑豊かな森林に流れる小さな川。
お店選びを任せておいて自分だけ聞いているのは申し訳なく感じたけれど、いつの間にかそんな気持ちは消えていて。
すっかり入り込んでしまった。
結城さんは、本当にこれを見るために今日ここに寄ったのだろうか。
そんな事をぼんやり考えてから、やっぱり偶然なんて嘘かと、ふっと笑みがこぼれた。