狼系王子とナイショの社内恋愛


その顔を見た途端、それまでの嫌な気持ちが払拭されて、温かい気持ちになった自分に驚いた。

優輝への恋心にはとっくに気づいていたけれど、そこまで大きな想いだとは思っていなかったから。
私を心配して抱き締めてくれた優輝に、気持ちが止まらずに私から告白して。

その二日後、優輝から自分も同じ気持ちだっていう告白を受けたと共に、恋人の関係が始まった。

それが二年前の事だ。


「――高橋さん」

髪を撫で上げる大きな手に気づいて目を開ける。

ぼんやりとした視界に、微笑む結城さんの姿が映ってハっとした。
テレビの画面右下にあるデジタル時計を見ると、21時ちょうどで……。
つまり、入店してから二時間が経とうとしていた。

私が早々とギブアップしてお店探しを結城さんにお願いしたのが19時20分だったから、少なくとも一時間以上寝ていた事になると気づいて、サーっと血の気が引いて行った。

「すみませんっ、結城さんにお店探させときながら……」

完全に寝ていた事に猛省して、ソファに座ったまま膝につくくらい頭を下げると、上からクスっと笑い声が落ちてきた。



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