狼系王子とナイショの社内恋愛


「気にしないでください。俺も起こさなかったんだし」
「本当にすみません……」
「気持ちよさそうだったので朝まで寝かせてあげたかったんですが。
時間も迫ってるのでそろそろ出る準備をしましょうか」
「……はい」

最悪だ。私。
ここ二週間ほど家でよく眠れなかったからってこんなところで……。
しかも人に用事押し付けておいて寝るなんて。
社会人としてというか、もう人間として最悪だ。

お願いですからおごらせてくださいと頼み込んで会計を済ませると、出口で待っていた結城さんがすみませんと微笑む。

「いえ。私の方こそすみませんでした。
あとこれ、店員さんがくれた割引券です」
「高橋さんが持ってていいですよ」
「いえ……バイトの女の子が結城さんにって言っていたので」

裏を見れば分かると思います、と差し出すと、それを受け取った結城さんが裏側を見る。
それから困った顔で笑った。


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