狼系王子とナイショの社内恋愛


メモリがひとり増えるだけで、何かが変わるわけじゃない。
そう思うのに、優輝との過去が消える気がしてしまってためらってしまう。

バカみたいですね、と笑う私に、結城さんは納得いかなそうに顔をしかめた。

「裏切った男をそこまで想う気持ちが、俺にはやっぱり理解できません」
「……私もです。なんで今でも好きでいるのか……自分でも分からないんです」
「でもそれじゃあツラいだけでしょ。
夢中になるのも想い合ってる時ならまだ分かるけど、振られた後まで響くんじゃマイナスにしかならないですよ。
だったら最初から夢中になんてならない方が楽しくないですか?」
「結城さんみたいにって事ですか?」
「まぁ、そうです」
「でも結城さんだって、誰かに夢中になったりする気持ちを分かってみたいって言ってたじゃないですか。
私は……相手を好きで夢中になってしまう事がマイナスだとは思いません」

確かに今はツラいけれど、だからって優輝と過ごした時間全部がツラかったわけじゃない。

今は優輝との事全部に悲しみだとかツラさの霧がかかってしまっているけれど、その中にはたくさんのキラキラした想いだってあるんだ。

今見えないだけで。




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