狼系王子とナイショの社内恋愛


「生真面目っていうか、律儀っていうか。
別に俺なんかを傷つけたところで高橋さんは何の損もしないのに」

結城さんは自分で言っていたように、確かに洞察力に優れてるんだと思う。
私の考えた事を全部分かっているみたいだったから。

軽い気持ちで興味があるなんて答えて、万が一でも結城さんを傷つけたりしたくないって考えた私の気持ちが。

「損はしないけど、得もしないから」

そう答えた私に、結城さんが微笑む。

「とりあえず、俺のアドレスだけには興味持ってくれると嬉しいんですけど」
「あ、そうでしたね」
「俺のアドレス、携帯に入れておくといい事があるって噂があるからきっと効きますよ」
「……それは社内の女性社員が言ってるだけでしょ。
結城さんがアドレスをなかなか教えないから、貴重って意味合いからおかしくなっていってそんな話に膨らんでるんです」
「いい噂は信じたもん勝ちですから。
赤外線、準備できましたか?」

受信画面を出して、赤外線受信を選択する。

「できました」
「じゃあ送ります」

今日、いい事があるとかいういわくつきの新しいアドレスが、一件増えた。




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