狼系王子とナイショの社内恋愛


だけど、いくら酔っ払い相手でも、社内の人間である事は間違いないし、下手な断り方してもマズイ。
そう考えて、一番穏便にこの酔っ払いをかわせる方法を巡らせていた時。
お尻のあたりを撫でられて、びくっと身体がゆれた。

椅子に座っている状態だから、お尻というよりは腰になるのかもしれないけれど……不快には変わりない。
完全なセクハラだ。

「酔っ払いすぎですよ」

震える声でそう注意したけれど、手は引っ込められる事なく私を触っていて。
ざわざわとした気持ち悪さに血の気が引いていくのを感じた。

やめてくださいって大きな声を出せばいいのかもしれない。
ここは電車とかじゃないし、周りはみんな知ってる人だ。
一言助けてって言えばどうにでもなる。

――けど。
今日は優輝の結婚祝いだ。

そんなおめでたい席を私が潰すの……?

そんな思いが、私を止めていた。


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