狼系王子とナイショの社内恋愛
「――岡村さん、うちの部下にセクハラはやめてください」
動けずにいた私から、気持ち悪い手をはがしてくれた声にトクンと胸が跳ねる。
「それと、だいぶ飲まれているようですが、高橋さんはアルコール苦手なので、あまりお酒の匂いをさせて近づくのもできればやめて頂けますか?」
瞬時に浮かんできてしまった涙を隠したくてぐっとうつむく。
企画課課長と楽しそうに話してたじゃない。
私なんか庇ってくれなくても大丈夫なのに……。
なんで、わざわざ優しくするの。
「今日の主役に言われちゃうと従うしかないですねー。
ごめんね、高橋さん。大人しいからつい調子に乗っちゃって」
そう苦笑いした岡村さんが、席を立つ。
「大丈夫? 顔色悪いけど……」
「大丈夫です。問題ありません。
……私、ちょっとお手洗いに行ってきます」
優しく声をかけてきた優輝の顔を見ることなく、そう言って席を立つ。