狼系王子とナイショの社内恋愛


このままじゃ優輝に甘えちゃう気がして、あの場になんかいられなかった。
二年前の事が脳裏をよぎる。
二年前、優輝の優しさにただ素直に喜べていた時の事が。

振られたのは、三週間前なのに。
私はあの時からまだ一歩も進めていない。


「高橋さん」

岡村さんに触られた気持ち悪さとか、危なく溢れ出しそうになった優輝への気持ちとか。
色々な気持ちをトイレで落ち着かせてから外に出ると、すぐに声をかけられた。
見ると、壁のところに優輝が立ってこちらを見ていて。

うっかり目を合わせてしまったせいで心臓が跳ねた。

「……何か用ですか」

甘えたくなる気持ちを抑えたせいで、かなり冷たい言い方になった。
そんな私を見つめた後、優輝が少し近づいてから立ち止まる。

優輝が立ち止まったのは私と一メートルくらい離れた場所だった。
……上司と部下の距離だった。


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