狼系王子とナイショの社内恋愛
「もう、いいですから……。聞きたくないです。何も」
「……でも」
「課長は、私じゃなくて他の人を選んだんです。
……それ以上説明する事なんてないじゃないですか」
「……ごめん」
優輝は顔を歪ませて、つらそうにそう呟いた。
二股した上他の人を選んだ優輝を、正直自分勝手だなとか、そんな風に悪く思ったりする事もある。
なんでって、心の中でも頭の中でも何度も責めた。
それは今だって変わらない。
私の中の優輝に、私はこれからも何度も責め続けるんだと思う。
だけど、優輝の優しさも知っているから。
今、つらそうにしているのが嘘じゃない事も分かっているから。
だからもう……解放してあげないとダメなんだ。
優輝も……私自身も。
とっくに恋は終わってしまっているのだから。
「さっきはありがとうございました。
でも……もう、振り返りたくないので、優しくしないでください。
私が誰に何をされていても、優しくしないで」
「高橋さん……」
「うっかり振り返りたくなって抱きついても、課長は困るだけでしょ。だから……。
私だってもう期待して傷ついたりするのは嫌ですから」