狼系王子とナイショの社内恋愛
優輝は眉を寄せて何かを堪えるように、ごめんとだけ言った。
三週間前にもうとっくに終わっていた恋なんだから、今更傷つく理由も必要もない。
さよならだって言われてるし、この三週間待っても電話はならなかったし、優輝が部屋に来ることもなかった。
やっぱりやり直して欲しいだなんて、私の夢の中だけの話だし、そんな事は現実には起こらない。
三週間前のあのさよならでもう、全部終わっていたんだから。
今、改めて傷つくなんておかしいのに……。
溢れる涙が、止まる様子も見せずに流れ落ち続ける。
会社の人だってたくさんいる飲み会の場だ。
こんなところで泣いてたら大変だって分かるのに……止まらなかった。
優輝はもう、今までみたいに愛情いっぱいの瞳で私を見てくれる事はなくて。
優しい手で頭をなでてくれる事もなくて。
きつく抱き締めてくれる事もなくて……。
“碧衣”
そう呼んで微笑んでくれる事ももうない。
その事実が、鉄の塊でも飲み込んじゃったみたいに重く消化できずに私を圧迫する。