狼系王子とナイショの社内恋愛
そういえば、総務は女の塊だし出会いがないって金子さんも文句を言っていたっけ。
そう考えると、今回の合同飲み会は結構よかったのかもしれない。
そんな事を思いながら、ひとり帰路につく。
優輝もなんだかんだで二次会に行くみたいだったな、なんて考えてから、目を伏せた。
考える時に優輝って呼んじゃうのももうやめないと。
バカバカしいかもしれないけど、なんだかそう呼んでる限り、変われない気がするし。
呼び方ひとつで忘れられるなら苦労しないけれど、意識して変えられる部分だけは変えていかないと、いつまで経ってもダメな気がしたから。
呼び方。部屋に置いてある写真。おそろいのマグカップや箸。アルバム。
電話やインターホンの音を待つクセ。
直せる部分は直そう。
きっとそれでも気持ちは簡単には変えられないだろうけど――。
「高橋さん」
伏せていた瞳をゆっくりと上げると、数メートル先に結城さんが立っていた。
驚いていると、お疲れ様でしたと微笑んだ結城さんが私に近づく。