狼系王子とナイショの社内恋愛


「飲み会の途中で岡村さんにセクハラされてたの、俺も気づいたんです」
「あ……そうだったんですか」
「でも、俺が出しゃばって飲み会をつぶしたくなくて、少し躊躇しました。
あの場を作るために、高橋さんが頑張ってたのを知ってたので。
不思議ですけど、高橋さんが考える事がなんとなく分かったから、我慢してたんです。
きっと高橋さんは、自分のせいでこの席を台無しにしたくないって考えてると思って」

結城さんの浮かべる微笑みが、少しつらそうに歪められる。

「でも、どうしても我慢できなくなって立ち上がろうとした時……佐々山課長が岡村さんを止めてました。
その後、高橋さんが席を外したから、大丈夫か心配になって追いかけて……。
また佐々山課長に先を越されました」
「……見てたんですか?」
「別に、盗み聞きするつもりもなかったんですけど。
高橋さんが俺には見せないような顔を佐々山課長の前でしてるのを見て、気付いたら立ちつくして最後まで聞いてました」

そんなの、結城さんの勘違いです。
そうかわそうとしたけれど、言えなかった。

自分の課長への気持ちは痛いほど分かっていたから。


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