ヒミツの隠れ家
第八回
“気になる”という気持ちは確実に“好き”へと変化していた。
誰もが見惚れてしまう容姿のうえに、優しくて美味しいコーヒーを淹れてくれる。
さらにこちらの気分や体調も敏感に察してくれる完璧な人だもん、誰だって好きになってしまう。
でも、まだ想いを告げるのは躊躇ってしまう。彼女がいるかもしれないし、以前お店で会った加絵さんが気になる……。
「……あれ? 今日、お休み?」
相変わらず就活中の私は、今回の面接もうまくいかず、樹さんのコーヒーで癒してもらおうと『Caféサプリ』へ来ていた。
しかし看板は出ていないし、店の扉も閉まっている。定休日かな? それともまだ開店時間じゃない?
「あっ! そういえば私……この店の営業時間を知らない……」
最初に訪れた時、樹さんから「夜中でも早朝でも、君の来たい時にどうぞ」と言われたこともあり、あまり気にしたことがなかった。
「樹さん……どうしたんだろう」
もしかして、風邪とか? 茜さんが代わりに店を開けるのかな? 気になるけど、連絡先を知らないし、開店するかどうかもわからないのに、待つわけにもいかない。
「明日、また寄ってみよう」
今日は我慢して、明日癒してもらおう。そう思っていたのに……。