ヒミツの隠れ家
結局、それから一週間『Caféサプリ』はお休みのままだった。
「今日こそ、開いてるといいなぁ」
仕事帰り、そう願いながら歩いていると、薄暗い路地裏にひと際輝いて見える店の看板があった。
「樹さん……!」
私は一目散に階段を上り、店の扉を開ける。するとそこにはコップを磨きながら、温かさの中に妖艶さもある笑みを浮かべた樹さんがいた。
私を見つけると「千穂ちゃん、いらっしゃい」と、明るく声をかけてくれる。その様子はいつもと変わらないみたい。
「よかった……一週間もお休みしてたから、どうしたのかと……」
元気な樹さんを見てホッとする。
「ごめんね、心配かけて……少し疲れが溜まってたんだけど、しっかり休んだからもう大丈夫だよ」
彼は申し訳なさそうに眉根を寄せると、コーヒーを淹れてくれた。嬉しくて、すぐに口へ運ぶ……が。
「樹さん、本当に休みましたか?」
「えっ……どうして?」
「コーヒー……とても窮屈な味がします。いつもはもっと優しいはずなのに。今日は少し違う……」
「ああ……参ったなぁ。他の人はわからなかったのに、どうして千穂ちゃんにはわかるんだろうね」
樹さんは苦笑すると、腰に巻いていたエプロンをほどいた。