ヒミツの隠れ家
第五回
樹さんと一緒に『Caféサプリ』へ戻ると、茜さんが迎えてくれた。
「あー、よかった。千穂ちゃん、戻って来てくれた」
どうやら茜さんは、私が飛び出した理由をわかっていたみたい。
「すみませんでした……」
気恥ずかしくなりながら謝る。
「千穂ちゃんが悪いんじゃなくて、勘違いされるほどくっついてた俺達が悪いんだよ。ほら、座って」
申し訳なさそうにする樹さんに促され、カウンター席へ座った。
「樹。不安にさせたんだから、千穂ちゃんに美味しいコーヒーを淹れてあげなさいよ」
「もちろん。千穂ちゃんを想って、最高に美味しく淹れるからね」
樹さんは妖艶に瞳を細めると、カウンターへ入った。私の胸はドキドキと高鳴るばかり。
その言葉だけで、その微笑みだけで……コーヒーがなくても充分だと思った。
樹さんがコーヒーを淹れ始めると、茜さんは私の隣にやってきた。
「私と樹って、姉弟に見えない?」
可愛らしく首を傾げる茜さんは、とてもじゃないけど三十八歳には見えない。しかも子供まで……。