こっち向けよ
「どうして帰って来れないの?」
腕の中に大人しく収まっている舞は、どこか幼げだった。
「友達と歌舞伎座に行ったら、大雨の影響で電車が停まったんだって。」
「そっか…心配だね。」
「うん…」
この2人だけの空間が心地良くて、瞳を閉じた。
気分は落ち着いているはずなのに、自分の鼓動が少し速くて、心音が舞に聞こえていないか心配になった。
母親を心配している内容の会話をしていた直後、息子は全く関係のないことを心配してるとか、随分薄情だな…
優先順位も気付けば舞。