こっち向けよ
「舞には婚約者が居るだろう?」
え、居たっけ?
「実はな、その婚約者がお前に会いたがっているんだそうだ。まぁ実際に会わねば確信出来ぬからな。舞もそうだろう?いつが良い?」
一気に頭の中に流し込まれた恐ろしい現実。
婚約者、なんて…
すっかり記憶から無くなってた。
でも固まっている暇はない。
今の私に必要なのは、愁なんだから!
「お祖父様!私はその婚約者様とは結婚したくありません!ですから、お会いもいたしません!」
テーブルの下に隠した手のひらは汗で濡れていた。
だって、この人は怒ると怖いんだから。