こっち向けよ
「舞」
ビクッと大きく体が跳ねた。
私の名前はそんな響きじゃない。
そんな、上から抑えつけるような恐ろしい響きじゃないのに!
握りしめる手に力が更に入る。
「どうして結婚したくないんだ?お前のために最上級の相手を見つけたんだ。…それとも他に男が居るのか?」
ドキン…
動じては駄目だ。
愁を失いたくないのなら、駄目だ。
お腹に力を込めて、背筋を正し、お祖父様を見据えた。
「男など、おりません。しかし私は自分で見つけたいのです。誰かが決めた人でなく、最上級とか最下級とか関係なく、自分の目で見て定めたいのです。」
お祖父様の目を見過ぎると良くない。
さり気なく鼻の頭に視線を移した。
自分の心臓の音だけが、耳に響く…