こっち向けよ
「そうとは知らず出過ぎたことを申して失礼致しました。」
私はきちんと時任さんに向き、深々と頭を下げた。
彼は執事である前に、仮にも婚約者の代理人なんだから、頭を下げても許されると思った。
「では…」
「しかし、」
頭を上げるよりも速く時任さんが明るい声で話そうとしたけど、私はそれを断ち切った。
頭を上げてまた見据える。
「申し訳御座いませんが、婚約を破棄させていただきたいのです。」
代理人でも立場上は婚約者同等。
直接断れて良かった…