こっち向けよ





「スー…スー…」



時刻は6時半。



すっかりゲームにはまってしまった。



そして隣のソファから微かに寝息が聞こえて見てみると、気持ちよさそうに愁が眠っていた。



整っている愁の顔はあいさんに似て可愛らしい、と言うより優しい感じが漂う。



伏せた睫毛は長くて、つけまつげみたい。



綺麗な寝顔に見とれていると、なんとなく唇に目が行った。



…私には、婚約者がいる。



きっと逃げ切ることはない。



屈するつもりは微塵もないけど、逃げ切る保証もない。



いいかな…?



私の心だけ、愁にあげても。



誰にも奪われたくない。



私も、私の心も、もちろん愁も。





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