こっち向けよ
だから突然現れた婚約者に迷うことなく頷く訳だ。
ありえねー、マジねーわ
「つーか、襲いたきゃ襲えば?」
その気はないとか言いながら、人の上に跨がってんじゃねーよ。
どいてほしくてそう言った。
「襲ってほしいの?」
「俺は襲う派だから。」
「私も襲う派なのよね。」
なんなんだよ、用がねえなら解放しろよ。
不意に彼女は視線をそらし、何かをその目に捉える。
「・・・今頃、舞は時任の腕の中よ。虚しいと思わない?」
「あぁ、虚しいね。気が狂いそうだよ。」
「随分落ち着いた声で話すのね。」
特技ですから。とは言わないで置く。
応じたら、気が狂って我を失い、抱きたくもない女を抱いてしまいそうだから。
俺って、弱いんだな。
ホント、舞って怖い。
感情が動くのは全て舞のせい。