こっち向けよ







だから突然現れた婚約者に迷うことなく頷く訳だ。




ありえねー、マジねーわ




「つーか、襲いたきゃ襲えば?」




その気はないとか言いながら、人の上に跨がってんじゃねーよ。




どいてほしくてそう言った。




「襲ってほしいの?」




「俺は襲う派だから。」




「私も襲う派なのよね。」




なんなんだよ、用がねえなら解放しろよ。





不意に彼女は視線をそらし、何かをその目に捉える。





「・・・今頃、舞は時任の腕の中よ。虚しいと思わない?」




「あぁ、虚しいね。気が狂いそうだよ。」




「随分落ち着いた声で話すのね。」




特技ですから。とは言わないで置く。





応じたら、気が狂って我を失い、抱きたくもない女を抱いてしまいそうだから。





俺って、弱いんだな。





ホント、舞って怖い。




感情が動くのは全て舞のせい。









< 207 / 226 >

この作品をシェア

pagetop