こっち向けよ






「じ、実は・・・私ッ!」



「舞」



舞の言いたいことはとっくに知ってるんだ、言わせる必要ない。




「今から、そっち行っていい?」



「・・・・・・・・・うん・・・」




この耳に響く心臓の音が、俺のじゃなくて舞のだったらいいのに。





さっき固めた決意を即蹴り飛ばしたことは棚に上げてつい感傷に浸る。




「玄関先に監視カメラあったよな?」




人生で2度しか上がったことは無いが、8年くらい前にそう聞いたことを昨日のことのように覚えている。




「あるけど良いよ、愁さえよければ。」




「じゃあ気にしない。今行くから」



「うん」




通話終了の表示をタップし、さっさと着替えて音も立てずに部屋を出た。












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