こっち向けよ
母さんはとっくに起きて、朝の日課であるヨガをリビングでしているのだろう。
明かりが点いているのを確認しつつ、静かに玄関のドアを開け、鍵をかけ直す。
舞の家は、俺の家と変わらない大きさだが造りや品が違う。
控えめでいて美しく、品があり、まさに舞にピッタリな家だ。
徒歩一分も経たないうちに舞の家に着く。
インターホンを押すか迷っていると、柵でできた門越しに、俺から約10メートル離れた家のドアが開き、舞が見えた。
こちらに軽く手を振りながら、ルームウェアのワンピースの裾を揺らす。
庭の鮮やかな花や木々と共に日の光を浴びながら歩く様は、昨日見た関根を一気に掻き消してくれた。