こっち向けよ






俺の腕で舞を包み込んでいる。



滅多に泣かず、泣くときは誰もいない場所で1人泣いていた舞が俺の腕の中で泣いている。



ここまで辛いときに俺を頼ってくれることに、不謹慎だが喜びを感じた。



タオル越しに頭を撫でて、背中をさすってあやす。



「…あのね……」



不意に舞が口を開いた。



「私…逃げたの…」



それは、俺の人生を大きく変えるものだった───




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