こっち向けよ
「愁は、舞ちゃんのこと好き?」
いつものように夕方舞が家に帰ってから、テレビをボケーッと見ている当時5歳の俺に母さんは聞いてきた。
俺はなにも躊躇わず、
「すきだよ」
そう答えたことを覚えてる。
「そう…」
聞いた母さんはなぜか悲しそうな笑顔を俺に向ける。
「あのね……」
母さんの表情をジッと見ながら言葉の続きを待つ俺に対して、母さんは目を泳がせて考え込んでは口をぱくぱくさせている。
「……どしたの?」
訳の分からない母さんの行動に首を傾げる俺。
「あの…愁?」
「うん?」