こっち向けよ
「時任くんだったから…」
「なんでそうだとわかんの?大体俺の家を知ってるとは限らないだろ。」
首を横に振る舞。
「私の婚約者なんだよ?恐らく彼は幼い頃からウチに来てる。愁の家だってわかるのは必然…」
「ふーん…ん?」
不意に胸に引っかかった。
「なんで出ないんだよ?」
舞の前置きの長い話の途中だったせいで泣いてウチに来る理由を知らないままだ。
「………」
どうやらあまり言いたくない様子。
目を逸らされ、口を尖らせてまた泣きそうな顔をする。