こっち向けよ
やっぱり、俺の知らない顔が…
「最初は、愁じゃん。だからまだ良いかなって思う…」
顔を上げて俺を見上げる舞は、いつもより可愛く見えた。
てか
え、俺?
「はじめてじゃないけど、好きじゃないから…耐えられなかったの。違うって思って苦しくなった」
舞は話を進めていく。
「舞、」
「ん?」
「俺がお前のファーストキスなの?」
「そうだよ?」
“覚えてないの?”と顔に書いてある。
覚えてないです。
「5歳くらいのときかな?『まいはおれのだー!』って熱だして寝込んでた愁にキスされたんだよ。あの後移って辛かったな~…」
あーそれで覚えてないわけか。
ん?
5歳…舞が自分のモノにならないと知らされた頃だな…