再生ゲーム
「や、止めなさい、もうすぐ授業が始まる。は、早く、教室へ行きなさい! 後で話し合おう。なっ?」


井上は見つめている。あいつの雰囲気は黒い靄がかかり、もくもくと渦が巻いている。こちらにも、その靄が襲ってきそうで怖かった。


チャイムが鳴り、井上はハッと我に返ったようだ。唸り声は停止した。


――センセイ。アイジョウノウラガエシヨネ? ワカッテル、センセイダケハ、ニククナイ


――センセイ、マタネ。


彼女は急いで走り去った。俺も、ホームルームへと急がなくては。


この後姿が、彼女を見る最後だとは、この時はまだ気づきもしなかった。
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