再生ゲーム
 ――名前が無い。


「ねえ、篠原君っていたよね?  どうしたの?」


「あ、しのちゃん? 転校しちゃったよ?」


「何で急に? だってまだ一年生でしょ」


「うーん。分からないよ? 一時期いじめが遭ったのかなぁ? そんな噂があったけど僕には分からないよ! じゃあね!」


――あの先生ならやりかねない。私のように追い込まれたんだろうか。


何人の生徒が獣の皮を被ったあの教師を、見破れるんだろうか?


「山田綾さーん? なにをしているんですかぁ? もうすぐ授業ですよ?」


背中に置かれた手が、暫く撫で回す。まるで下着を着けているのかを確かめているようだ。


「……はい、猿田先生。教室に戻りますので」


「そうだよぉー? 遅れたら駄目ですよ? ……ふふふ」


その手が背中から、そのまま下へスッと撫で下ろす。スカートに触れ、お尻の感触を味わっているようだ。その手がクルクルと確かめるように回される。


「遅刻したら、お仕置きしちゃいますよぉ?」


バッと、先生から離れ距離を置いた。生暖かく気持ちの悪い感触が身体に残る。
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