再生ゲーム
「お父さん。今本当に幸せ?」


――私は……


会話を中断させたかったように、携帯の着信音が奏でた。


「悪い、携帯が鳴っている。良かったら、玉子食べていいぞ?」


子供扱いして! そう思いながらも、玉子を箸で掴んだ。


「もしもし、どうした? ああ、なんだ。そんな事か! 明日会社で言えば良いのに……それは」


女の人の声? ……気のせいかな。


口内にふんわりとした甘みが広がる。飲み込もうと食道を通り抜ける瞬間だった。


飲み込んだ玉子が喉につっかえた。急いで味噌汁を啜り、見間違えじゃないかともう一度、階段の影を見た。


やっぱりそうだ。りんだ。生気のない顔で、ひっそりと父を見ていた。
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