再生ゲーム
 ――な、何やってんのよ! あの女!


真っ直ぐに父だけを見て、私の視線にも気づいていないようだった。


殺気立ったモノを感じ、思わずお父さんのほうを見た。話に夢中になり、周りの状況なんて分からないらしい。


「お、お父さん、ちょっと」


「なんだ綾? 仕事の大事な話なんだ。ちょっと待って」


携帯を耳から少しだけ離し、電話口を手で塞いで、そっと言った。


――良いのかなぁ。なんだか凄く怖い。


やはり思った通りだった。物陰から姿を現し、生気のない顔は、カッっと鬼のような面相に変わり、父の元へと暴走し携帯を奪った。


「りん! なっ、何をするんだ!」
< 349 / 724 >

この作品をシェア

pagetop