再生ゲーム
 ――私は呆然とした。


あんなりんは始めて見た。大人しいと思っていた女が、堂々と牙を向き出した。ギョロリと目をひん剥き、携帯を真っ二つに折り曲げた。


二つに分かれた無残な機械を両手で握りしめ、ワナワナと揺れている。


「りん、それは仕事の大事な電話だぞ……何を考えているんだ!」


「嘘よ……どうせ女からなんでしょ、だったら誰なのよ! 体の調子が悪いって言っているのに、何を楽しそうに話しているのよ!」


「グルルルルッ!!!! ワンワンワンワン!!!!」


ゲームが小さな体で、庇うように父の前で吠え続けた。
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