再生ゲーム
「るい! 麦茶が零れたじゃねーか!」


カーペットに転がったマグカップに、康夫は腹を立てた。


「康夫さん、俺だけじゃ物足りないでしょう? 神谷にも教えてやってよ。彼は俺と違って、本物だ。反応が良いと思うよ。神谷、俺は自分の部屋で、ゆっくり飲んで待ってるから」


るいは背中を向け、部屋を出て行った。


慌てふためき、追いかけようとしたが、がっちり組まれた康夫さんの腕は、振り払えなかった。


「麦茶でびちょびちょじゃないか……洋服を乾かさないと」


「……だ、大丈夫です。僕、帰ります」


しどろもどろに言い、身を退けようとしたが、大人の力には、かなうはずもなかった。
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