再生ゲーム
 美樹子もそうだが、この男も押し付けがましい似た物夫婦だった。家庭内の口論も増加した。


――イライラが爆発しそう……


そんな中、またメールが入る。


【拓也さんも綾ちゃんも、もういないですよね? 玄関の鍵を開けて置いて下さい。今から、遊びに行きます】


気持ち悪い男……吐き気がした。隣の家には、女房も子供もいるのに。


それでも言うことを聞くしかなかった。命令されたように、扉の鍵を開けた。


――大丈夫。ただ、会話をするだけよ。近所の井戸端会議となにも変わらないわ……。


自分に言い聞かせながらも、あの男がいつ家に入り込んでくるのかを考えると、胸が圧迫され苦しかった。


気分が悪い……この感情を紛らわすように、思わず酒に頼りたくなる。


飲んでも、この状況は変わらないわ、そんな考え駄目よ。なんとかしなくっちゃ――。


カチャッとドアノブが回される音に、心臓が矢で射抜かれたようにズキッと痛んだ。


「やあ、りんさん。遅くなりました」


とうとう家に入れてしまった。


大好きな拓也さんに対する、罪悪感の波が押し寄せた。この不快な津波はどうしたら引くの――?
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