再生ゲーム
「先生が、りんさんの眼に誘われるように来てしまうって言ってたよ。りんさんが先生を誘惑してるんじゃないの? こんな不愉快な話、朝からしたくないから学校へ行くね!」


鞄を取り、りんを睨みつけた。


「今の話は本当か? お前、猿田先生にまで手を?」


「拓也さん……それってどういう意味? 私は浮気なんてしてないわ?」


りんは、今にも泣き出しそうに顔を歪ませた。


「ごめん、りん。ちょっと調子悪いわ。俺も着替えて仕事へ行く。朝御飯は止めておくよ」


「お父さん、騙されてるんじゃないの? 学校、先に行くね」


――間違いない。お父さんはりんに、疑いを抱き始めている。


「なんでこうなるのよおおおお! 私は、私は……ただ幸せになりたいだけなのよ! なぜ望んではいけないのよぉ!!!!」


玄関を閉めようとすると、泣き叫ぶ、りんの悲鳴が聞こえた。


――お母さんを破滅に追い込んでまで手にした幸せ? 人を不幸にした人間が、幸福を手に入れられるハズないじゃない!


「綾ちゃん、おはよう」


玄関を飛び出すと、聡子の父親が立っていた。


「おはようございます。どうしたんですか?」


「いや、今りんさんの声が聞こえたような気がしたから」


――そうだとしても、オジサンには関係ないじゃない。変なの。


「気にしないで下さい。学校があるので、行って来ます」
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