再生ゲーム
 胸の内が幸福感で満たされ校門に着くと、猿田が立っていた。幸せな妄想から、急速に現実世界に戻された。


「山田綾さん。おはよう……ちょっとこっちへ良いかな?」


「おはようございます! 私も聞いて貰いたい話があるんです!」


素直に従い、学校裏の影へと場所を移動した。


「秋山君がちゃんと謝ってくれました! 先生のお陰よ!」


肩幅を無理やり広くしたような、背広に声を掛けた。耳毛がそよぎ、ゆっくりと振り返る。太陽の光が、黄ばんだ前歯に照らされた。


「それは先生も嬉しいよ。君は一番の大事な人だからねsあ二番目に大事なあの人は、なにか言っていたかい?」


――家に連れて来て欲しくない。


りんの言葉が脳裏に蘇る。伝えようか、伝えまいか迷った。
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