再生ゲーム
 2人が食べ残したお皿を黙々と片付ける。


悲しい時間。寂しい時間。


拓也から以前、聞かされた話がある。なんでも朋子さんは、朝食を残されると怒り狂ったという。


私だって家計をやり繰りしているのに、食べ物を残されると、腹が立つよ。でもそんな話を聞かされたら、怒るに怒れないじゃない……。


食器を重ね、先程の罵声と鬼のような美樹子の顔を思い出す。


――警察に行くと言っていたけれど、宝石のお金は一括で払ったし、レシートも回収した。ばれないわよね? あ……そういえば画像があるとか、ホームページがどうだとか、いろいろ言っていたわね。あれって一体なんの話?


水を細く出し、スポンジに洗剤を付けた。悲しげな食器たちが泡だらけになった。


確か、ホームページ? サイト? そんな話を前にも聞いたような……。


記憶の糸を手繰り寄せる。食器洗い機のように手だけは無意識に動き、思考だけはグルグルと意識的に回転した。


そうだ。あの男も言っていた……栗田の旦那。


洗い終えた食器たちを水切りカゴに入れ、蛇口を捻り、水を止めた。


――なにかあるんだわ?


拓也さんのパソコンでちょっとだけ調べてみようかしら。
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