再生ゲーム
 蘇りそうな記憶に急いで蓋をする。だが、中からその重石を持ち上げるように、必ずあの男がいた。


――猿田。あいつだけには、私の全部を知られたくない。一体どうすれば? 拓也を苦しめていたのは、本当は私なのかも知れない。でも良いわよね? 今、2人は幸せなんだから。


「お待たせしました。赤ワインとステーキ、レアでございます」


鉄板にのせられた分厚いステーキ。滴る血が、熱でジューと叫んでいる。


――ふふっ。まるで綾の悲鳴みたいね……頂きます。


獣にでもなったように、肉を噛み締め考える。


――問題は、るい。どれだけ綾を愛しているのかしら? それとも別に執着する何かがあるのかしら……それにしてもあの子。私と同じ暗い闇を持っているような気がするのよね。

綺麗な子って、それだけで注目をされ、周りには人が集まり、幸せなオーラを出すもの。でもあの子、最初は笑顔を作っていても、視線を逸らす眼には陰りを見せる。


確か母子家庭で、母親には恋人がいたのよね……家庭に問題があるとしても、子供があんな表情をするのかしら?
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