再生ゲーム
「そ、そんなこと言わないで! 貴方に捨てられたら私、生きてけない! 貴方は私の全てなの……お願い、そんな風に言わないで――」


手を振り解こうとする拓也。男の力に敵わない両手は、股へと移った。


「とても冷静でいられない……お願いだ。離してくれ、明日また話し合おう。惨めなお前は見たくない」


「貴方、信じて! お願いよ。何もないのよ……ううう」


太股の手も呆気なく解かれ、りんの両手はリビングに突き、泣き崩れた。


――あの強気のりんさんが泣くなんて……綾、これを見てどう思うの?


ちら見した綾の横顔は平静だった。まるで何もかも知っていたかのように。
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