再生ゲーム
 取っ組み合いになる二人。だがりんは男の力に敵わなかった。ソファーに押し倒され、猿田は上乗りになった。


「さあ……これで君は僕の――グフッ、り、りん?」


お互いがお互い、力任せで勢いをぶつけ合い、りんが向けていた刃先は猿田の胸へ沈んだ。


――ズブリ。


肉体に物体が埋もれる嫌な音。そこから飛び散る鮮血。りんの色白の顔に血しぶきが掛かる。ナイフを掴む手も真っ赤に染まっていた。


「きゃあああああ!!!! り、りんさん……ちょっと何をしてるの!? せ、先生!!!!」


「あ、綾ちゃん……ち、違うのよ」


猿田は蹲り、刺さったナイフを両手で握り締めた。引き抜こうと動かしたが、口から血を噴出し、ソファーから転がり落ちた。


ドサッと体は床に叩きつけられ、一瞬だけリビングに静寂が広がる。
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