再生ゲーム
それでもりんは何も無かったように近づいてきた。


「綾、後ろに下がっていなさい」


父から少しだけ距離を置き、そっと退いた。


「拓也さん……私の人生、貴方が全てだったの。暗い学園生活も、貴方がいてくれたから耐えられた。

如何わしい仕事をしたのも、整形をして貴方好みになりたかったから。奥さんを追い出したのも貴方を手に入れたかったから――何がいけないの? なんでよ!!!!

こんなに拓也さんを愛している私を捨てるの? ねぇ、このままだと犯罪者になっちゃうわ? 一緒に死体を隠しましょうよ?」


「お前は狂っている! あの時からずっと、今でもずっと……何も変わっていない!」


「……じゃあ、せめて一緒に死んでよ――良いでしょう?」


漆黒の闇を浮かべた瞳が猿田をじっと見つめ、ナイフを抜き取った。その瞬間傷口から血がまた噴出し、黒い瞳を赤に変えた。
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