ブラッディ・ラブ
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1ヶ月、結局俺はクレハの部屋で過ごした。
彼女は小さい頃に両親を亡くしていて、ずっとひとりだったらしい。
俺に襲われたと思った時笑っていたのも、「つらい時こそ笑ってなさい」という母の言葉が強く頭に残っていたからだと言う。
まるで普通の恋人のように過ごす1ヶ月はとても満たされていて、そして幸せだった。
できることなら、このままここでクレハと一緒にいたいと、本気でそう思った。
……だが、クレハひとりから摂取できる血の量だけでは、生きていくのは難しかった。
目に見えて痩せていく俺に、クレハは何度も謝ってきた。
何もできなくてごめんと。
そのたびに俺は、クレハがいなかったら自分はとっくに死んでいた、と笑う。
「あたしも、黎と一緒に行きたい」
涙を浮かべて、俺が故郷に帰る前日、そう言った。
俺だって、そうしたい。
……だけど、人間を故郷には連れて帰れない。