ブラッディ・ラブ
そういう、きまりだった。
そう言うとクレハはいっそう顔をしかめて。
「……なら、あたし吸血鬼になる」
そう言って、俺の手を握った。
「そしたら。……そしたら、一緒にいられるんでしょ?」
「……駄目だ」
クレハは泣きそうに顔を歪めた。
「やだ。……黎と離れるなんて、やだよ……!」
お願いだから、連れて行って。
そう、クレハは俺の腕にすがりついた。
「ごめん」
何度目かわからないその言葉に、クレハはポロポロと涙をこぼした。
それから、幾度となくそのやりとりを繰り返し、泣き疲れたのかいつの間にかクレハは涙を流したまま眠っていた。
「れ、い……」
小さな唇から零れる声に、愛しさが溢れた。
クレハが吸血鬼になる、と言ってくれたのは本当に嬉しかったけれど、そう簡単に彼女の人間として生きる未来を奪ってはいけないと思った。
一度ヴァンパイアになったら二度と人間には戻れない。
戻りたくても、戻れないんだよ────。
「好きだ、クレハ」
朝日が昇る前に、すやすやと寝息を立てているクレハの頬に軽くキスをして、そして、彼女を起こさないように部屋を出た。