ブラッディ・ラブ
「どうして倒れてたの?」
「……」
「ねえ」
彼女が喋るたび、動くたび、ふわり、ふわりと鼻腔をくすぐる甘い甘い血の香り。
狂おしいほどに、欲しい。
今すぐこの細い首筋に噛みついてしまえたら、どんなに楽だろうか。
「ねぇ、黎」
「……っ」
名前を呼ばれた瞬間、自分でも意外なほどあっさりと身体が動いていた。
いつのまにか自分の下に彼女がいて、怖がるように、驚いたように、俺を見ている。
「……れ、い……?」
「……悪い、無理だ」
もう我慢するのは、無理だ────。
口を開いて鋭い八重歯が彼女の首筋にかかった、瞬間。
「あは……」
泣きそうな笑い声が、耳に届いた。