ブラッディ・ラブ
びっくりして彼女の顔を見ると、泣きそう、ではなく。
……彼女は、泣いていた。
泣きながら、笑っていた。
「そ、っか。あなた、怖い人だったんだね」
「……」
「いいよ、大丈夫。あたし、強い子だもん。これくらいで泣いたりしないんだから」
言いながらも、彼女の涙が止まることはなくて。
皮肉にも、涙でぬれた肌はその香を強めた。
「……クレハ」
ちょっとだけ。
本当に、少しだけでいい。
血が、欲しい。
生きるためでも、出会ったばかりの君に甘えるのは最低だと分かっている。
だけど。
俺は、出来るだけ傷跡が残らないように。
できるだけ痛みを与えないように。